
パソドブレとは
The History Of Paso Doble
18世紀、スペイン人の愛する伝統的娯楽「闘牛」においてマタードール(闘牛士)が入場する際に奏でられる勇壮な楽曲をパソドブレと呼んでしました。同じ頃、それまで宮廷の占有物であった「オペレッタ(オペラの軽いもの)」が民衆に広がり始め人気を集めていました。これまでマタドールの入場曲であったパソドブレがその中で歌舞曲として使われるようになり、オペラ『カルメン』にも登場することになります。
こうして舞台に登場したパソドブレは民衆の間でも踊られ始めます。当初は男女が向かい合って行進しているような単純なステップの踊りでした。その踊りは「スパニッシュ・ワンステップ」という名で当時世界文化の中心であったパリに、「タンゴ」や「フォックストロット」の後を追うように伝わり大流行しました。著名な作家「アネスト・ヘミングウェイ」も闘牛に魅せられ、その歴史、技術を伝える小説『午後の死』を世に出すことになります。この時、楽曲だったパソドブレが、パリでダンス名として定着しました。1932年、元来の行進曲の要素とフラメンコの雰囲気を持つ『エスパーニャ・カーニ』という楽曲が作られ、現在でも競技用の振り付けはこの曲を基に考えらています。
その後、パソドブレは男性は誇り高きマタドール、女性はケープ、時にはフラメンコダンサーや闘牛を踊りで表現したりすることで華麗で迫力のある(どこか寂しげな)踊りとなり、ラテンダンスの一種目として確立しました。
この踊りは、いろいろなダンスの中で一番力強いものを感じさせるダンスです。それは生と死という瞬間をモチーフとしたドラマを演じているからでしょう。しかしその全てが、生と死ではありません。マタドールの登場から退場までそこには色々なドラマがあります。大きな会場と多くの熱気に包まれた観衆、砂地の大きなグランドに水が巻かれ、やがてやってくる戦いの時、シュール・プラスの様に湿った砂地を踏みしめ長牛に近づく闘牛士、牛を挑発し戦いを挑むアペルの音。パソドブレの特徴はこうしたドラマ性で、男女それぞれの役割を理解し演じなければならないのです。したがって男性は常に堂々とした姿勢を保たなければなりませんし、女性はしなやかの中にも力強さを忘れてはなりません。
音楽と代表曲
音楽は2/4拍子記号で書かれていますが、その殆どは2小節で区切られていますので
1234とカウントされることが多いです。
代表曲:『Espana Cani』 『Spanish Gypsy Dance』 『Malaguena』